約一年半前、コロナの蔓延とともに市場からマスクが消え、店頭でもネットでもマスクの争奪戦が繰り広げられました。まだ記憶に新しいそんな状況が嘘のように、今では様々なマスクが市場に溢れ、争奪戦どころかマスク商戦が繰り広げられています。消費者にとっては選びたい放題の幸せな状況です!最近では不織布マスクを推奨する声も聞かれますが、どのマスクにもメリット・デメリットはあるものです。市場に出回っているマスクの特徴をよく調査し、自分の満足のいく素材、機能、価格のもを選びたいものです。
市場に出回る3大マスク
不織布マスク
不織布とは、その名の通り繊維を織らずに絡み合わせたシート状のものです。この素材を使用して作られたものが不織布マスクです。
不織布マスクはフィルター性能が高く0.1㎛程度のウイルスガード率95%の性能があります。ノーズワイヤー入りで鼻部分は隙間なくしっかりフィットさせることができます。フィルター性能が高い分、通気性・吸湿性は悪く、汗を吸収しないために、長時間付けていると、蒸れ、息苦しさを感じることもあります。素材自体が硬い為、日常的に使用していると肌荒れを起こす場合があります。
1枚あたりの価格が安いのが特長ですが、使い捨てタイプなので消費量は高く毎日使用する場合は費用がかさみます。また、マスクが欠かせない毎日でゴミとして捨てられる数は相当な量になることが想像されます。
ウレタンマスク
ウレタンとはポリウレタンの通称で2種類の原料を混ぜ合わせてつくるプラスチックの一種です。このウレタンを使って作られたのがウレタンマスクで、コロナ禍のマスク不足の最中に開発され一般的になりました。
特徴としては、不織布ほどのフィルター性能は無く、30㎛程度の花粉粒子ガードには適していますが、PM2.5、飛沫(2㎛程度)、ウイルス(0.1㎛程度)には適していないようです。最近では、様々なデザインの商品が出ており、無難な白や無地タイプのものから、カラフルでファッション性の高いものまで幅広い選択肢があり、安価なところからも若者の間で人気となっています。
ウレタンは柔らかい素材のため肌当たりは良く耳も痛くなりにくいものが多いです。また洗って使用できるためエコなマスクでもあります。
布マスク
布マスクは、昭和生まれならなじみ深い給食当番のガーゼマスクをはじめとする、製織された布(生地)を縫製して作ったマスクです。最近ではハンドメイドする方も多く、生地の素材、デザイン、形状も様々で、ひとくくりには出来ないマスクでもあります。そのため、性能も生地によって様々です。
洗って何度でも使用でき、手作りのものであれば、耳ひもを調整したり、外れてしまってもつけ直したりできるのが利点です。使用している生地の素材や密度、織り方によってはそれなりの高いフィルター性能を持つものもあり、PFE(微粒子捕集効率)約80%の結果を出している商品もあります。
素材や形状にこだわった商品がたくさん製造されており、そういったマスクは価格も高くなりがちです。しかし洗って何度も使用でき、度重なる洗濯でも素材の持つ効能や風合いが変わらない良質のものは、長い目でみると低コストになると言えます。何といっても使い捨てないことが人に環境に優しいマスクです。
3大マスクの気になる点を比較
フィルター性能
スーパーコンピュータ富岳のシミュレーション結果によると、不織布マスクの飛沫の吸い込みは30%程度です。それに対し、ウレタンマスクは60~70%、布マスクは素材が幅広い為55~65%となっています。
一方、吐き出しは、不織布マスクが20%程度、ウレタンマスクは50%程度、布マスクはやはり素材の幅広さからか18%~34%との少し幅のある結果が出ています。
不織布マスク | ウレタンマスク | 布マスク | |
飛沫の吸い込み | 30% | 60~70% | 55~65% |
飛沫の吐き出し | 20% | 50% | 18~34% |
吸い込みについては不織布マスクが高い結果を出していますが、吐き出しに関しては布マスクと不織布マスクは殆ど変わらない結果が出ています。
フィット性
不織布マスクはノーズワイヤーが付いているため鼻部分はピッタリフィットできます。しかし、サイドは浮いてしまているのをよく見かけます。サイドの隙間からの漏れや入り込みが懸念されます。
ウレタンマスクは中央で縫製して立体的な形状になっているものがありよくフィットします。生地が薄い為、フィットする半面、話をしたり呼吸するときに鼻や口のあたりに吸い付くような動きをしています。ガーゼなどを1枚間にはさむとフィット感的にも厚み的にも安心感があるという方もいます。
布マスクの初期のタイプは給食当番マスクのように平面生地にゴム紐を通した形状ですが、最近はギャザーをつけたり立体的に縫製・製織したり、ストレッチ素材の生地で作ったりとフィット性に優れた商品がたくさんあります。柔らかい生地や少し厚みのある生地で包み込むようにフィットするため安心感があります。
息のしやすさ
不織布マスクはフィルター性能が高い分、ウレタンマスクや布マスクと比較すると呼吸がしにくいと感じる人が多いようです。
ウレタンマスクは比較的素材の目が粗いため、呼吸はしやすいようです。ただしそれはフィルター性能に劣るという欠点でもあります。
布マスクは素材により様々ですが、不織布に比べると呼吸はしやすいものが多いようです。
肌へのやさしさ
不織布マスクは化学繊維から作られているものが多く、ウレタンや布と比べると素材が硬くお肌にやさしいとは言えません。特に硬い縁の部分が頬に当たり肌に刺激を与えてしまう場合もあります。また、通気性が低いため、マスク内の蒸れが原因で肌荒れを起こす人が多いようです。
ウレタンマスクは柔らかい素材のため肌当たりはよく、肌への刺激も少ないと言えます。
布マスクは肌に刺激の少ないコットンなどの天然素材を使用しており、通気性の良さから蒸れることも少なく肌荒れを起こしにくいのが特長です。シルクプロテイン加工等の肌に良い加工を施しているものもあります。
耳への負担
不織布マスクの耳紐は細めのゴムで作られているため長時間付けていると耳への食い込みから痛みを感じることが多いようです。
ウレタンマスクの耳にかける部分は、口を覆う部分と一体になっている同素材であるため、やわらかく耳への負担は軽いようです。
布マスクの耳紐は様々ですが、最近では手作りマスク用の太めのゴムが市販されていたり、調節可能なアジャスター付きのものや、マスク専用のゴム紐を独自に開発する企業もあり、耳への負担の軽い製品が多く販売されています。
耐久性
不織布マスクは1度使用したら捨てることを想定して作られており耐久性は期待できません。
ウレタンマスクは洗って何度も使用できますが、耳にかける部分など、カット面がそのまま出ているところは数回洗濯すると劣化してきます。
布マスクも、洗って何度も使用できます。素材にこだわったものは洗濯を丁寧にすれば衣類と同じで質感を持続させて長く快適に使用できます。しかし、長い間には布も劣化してきますので、定期的に交換することをおすすめします。
その他、扱いやすさ(使い捨て/繰り返し使用)やコスト面などを考慮し3つのマスクを独自に採点してみました。布マスクは素材にこだわった比較的価格の高いものを想定しています。また、この採点表はあくまでも様々な方の意見を参考に独自の見解に基づきに判断したものです。
こうして比較してみると、それぞれのマスクの長所・短所を点数化した場合、全体的な評価に大きな差は無いと考えられます。フィルター性能だけにこだわるのであれば不織布マスクが一番効果的ではあります。しかし、不織布マスクは空気抵抗が大きいため、横から漏れる小さい飛沫は布マスクより多くなるという見方もあるそうです。
不織布マスクはウイルスの抑制効果が最も高いですが、息苦しさや蒸れに不快を感じて度々マスクを外してしまうのであれば、少し性能が落ちても呼吸がしやすい肌触りの快適なウレタンマスクや布マスクを使用する方が良いという考え方もあります。
マスクを必要な時にきちんと付けていることが一番のウイルス抑制になります。
ウイルスをガードし、1日中そして365日ストレス無く使用し続けられるマスクを、性能・快適性・価格のバランスと、自分が求めているものに合うかどうかを考えて選ぶことをお勧めします。
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